たとえば、「明日、正午頃に東京で震度5の地震が発生する」と誰かが予言し、それが当たったとすると、多くの人々は、驚き、感心しますが、しかし、「明日、日本のどこかで震度1の地震が発生する」と誰かが予言し、当たったとしても多くの人々はあまり感心しません。この2つの情報の価値の違いはどこから来るのでしょうか。
また、我々は、たとえば、「大量の情報が漏れる」、「不確かな情報に依ると」、「情報の公開」等、日常の生活において「情報」という言葉を毎日耳にしています。洪水のように氾濫しているとも言える種々の大量の「情報」をどのように数量化し、科学的に扱ったら良いのでしょうか。
「情報」の不確定さ、大きさ、価値などをどのように情報量として測り、「情報」をどのように数理表現し、そして、「情報」をいかに数理的に分析するのかが情報科学であります。加えて、情報科学は、自然科学、社会科学、人間科学などの各分野における、現象、システムの種々の「情報」に関わる問題を定式化し、現象、システムの仮説(あるいは、モデル、原理)を数理的に作成し、「情報、情報量」に基づく数理的分析方法、手法を理論構築し、それにより、(得られた「情報、情報量」の関数としての)最適な解を推論して、種々の分野における実用上の問題点を解決、改善することを目的としています。
本学科の「情報科学」は、基礎数学を基盤とし、「情報」をどのように数理的に扱うのかを対象とする「基礎数理情報」と、「情報、情報量」に基づく数理的分析方法、手法の構築を対象とする「応用数理情報」、そして情報を処理するシステムを対象とする「計算機科学」の分野がお互いに重なり合って構成されており、カリキュラムは、これらの分野の知識がバランスよく身につくようになっております。1年次から専門基礎を学びますが、特に3年次後期からは、研究室に所属し、教員の個人指導のもとに専門をより深く、学びます。そして、本学科は、情報数理、量子情報、遺伝情報、応用確率論、統計数理、人工知能、量子コンピュータ、ソフトウエア科学等の情報科学の核となる分野の教育・研究に取り組んでおります。
これからますます急速に時代や社会の変動が激しくなるであろう21世紀情報化社会において、どんな時代が来ても素早く、きちんと変化に対応でき、常に社会で活躍できるように、そのために、特に、基礎数学、基礎数理に重点をおいた情報科学の基礎知識を十分にしっかりと身につけた人材育成を行っています。社会に出てからではもはやじっくりとは取り組めないような、大学だからこそ出来る基礎教育・基礎研究を、特に重視しています。